エウクレイデス

ギリシャの数学者

エウクレイデス(ギリシア語: Εὐκλείδης)は古代ギリシアの数学者、天文学者とされる。アレクサンドリアのエウクレイデス、英語読みでユークリッドとも。プトレマイオス1世治下に活動したとされるが、生没年、出生地、死没地とも不明である。最初期の体系的数学書『原論』の作者とされる。

エウクレイデス

引用 編集

『原論』 編集

  • これが証明されるべきことであった。
    Ὅπερ ἔδει δεῖξαι.
    Hoper edei deixai.
    • 『原論』、巻1、命題4。
    • ラテン語訳は Quod erat demonstrandum(略:Q.E.D.
  • これがなされるべきことであった。
    ὅπερ ἔδει ποιῆσαι.
    Hoper edei poiesai.
    • 『原論』、巻1、命題1。
    • ラテン語訳は Quod erat faciendum(略:Q.E.F.)。
  • 全体は部分より大きい。
    Καὶ τὸ ὅλον τοῦ μέρους μεῖζον [ἐστιν].
    Kai to holon tou merous meizon.
    • 『原論』、巻1、公理8(版によっては公理5)。「公理」は逐次的には「共通の考え」。下記も参照。
    • 参照:アリストテレス『形而上学』巻8、1045a「…全体は、そうであるとされているような、たんなる集積ではない。むしろ全体は諸部分に付け加わった何かである」[πάντων γὰρ ὅσα πλείω μέρη ἔχει καὶ μὴ ἔστιν οἷον σωρὸς τὸ πᾶν]
  • 素数はひとつの単位によってのみ計られる。
    Πρῶτος ἀριθμός ἐστιν ὁ μονάδι μόνῃ μετρούμενος.
    Prōtos apithmos estin ho monadi monē metroumenos.
    • 『原論』、巻7、定義11(版によっては定義12)

帰せられるもの 編集

  • 幾何学に王道なし。(μὴ εἶναι βασιλικὴν ἀτραπὸν ἐπὶ γεωμετρίαν, mē einai basilikēn atrapon epi geōmetrian, Non est regia [inquit Euclides] ad Geometriam via)
    • 『原論』よりも簡便な方法で幾何学を学べないか質問したプトレマイオス1世への返答とされる。
    • プロクルス(紀元後412年−485年)の『ユークリッド原論巻1への注釈』(Glenn R. Morrow 訳、1907年、p. 57ではἀτραπός (道、経路)ははっきり「近道」を意味するとしている。ラテン語訳は Francesco Barozzi, 1560年。
  • 彼に3ボロン(当時の硬貨)やりなさい、そうすれば彼は学んだことから必ず儲けを得るだろう。(Δός αὐτῷ τριώβολον, ἐπειδὴ δεῖ αὐτῷ ἐξ ὧν μανθάνει κερδαίνειν, Dos autōi triōbolon, epeidē dei autōi ex ōn manthanei kerdainein.)
    • エウクレイデスの学生が幾何学を学んで何が得られるか訊いた際に、エウクレイデスが召使にいったとされる言葉。3ボロンは当時裁判官が出廷したときの標準的報奨。教師と学生の関係を被告人と陪審の関係に横滑りさせる皮肉が込められている。


誤って帰せられるもの 編集

  • 自然の法則とは神の数学的な考えである。
    The laws of nature are but the mathematical thoughts of God.
    • Stanley Gudder, A Mathematical Journey, 1994 p. xv はこの発言をエウクレイドスに帰しているが、それ以前の多くの著作はヨハンネス・ケプラーの発言としている。後者の最古の例はカリフォルニア州 Fowler Union High School の校長 J. McIntosh の "The Mathematics of Elementary Chemistry" (School Science and Mathematics, Volume VII (1907), p. 383 所収)。ところが、エウクレイドスの著作とケプラーの著作の両方にこの字句は見受けられない。いっぽうで1888年の Notes and Queries, Vol V. はこの発言をプラトンのものとしている(p. 165 )。可能性としては、ケプラー『諸天体の調和』(1618年)にある「幾何学は神の思いのうちにある永遠の輝きである」「諸事物の誕生以前に幾何学は神のうちに神と共に永遠のものとして存在していたのだから、神自らが世界の創造にあたって己の範型となったのである」の片方あるいは両方を敷衍したものであろうか。

エウクレイデスに関する引用 編集

  • 公理(axiom)という術語はプロクロスによって使われた。エウクレイデスによってではない。エウクレイデスは、むしろ、「共通の考え」について語った。人類すべてにとって、あるいは学問全体にとって共通なものについて語ったのだ。--フロリアン・カジョリ
    The term 'axiom' was used by Proclus, but not by Euclid. He speaks, instead, of 'common notions'—common either to all men or to all sciences.
    • Florian Cajori, A History of Mathematics (1893)
    • アメリカの数学者、1930年没。
  • ただエウクレイデスだけが美を露わにみた。--エドナ・セント=ヴィンセント=ミレイ
    Euclid alone has looked on Beauty bare.
    • Edna St. Vincent Millay, Sonnet
    • アメリカの詩人、1950年没。

関連項目 編集

外部リンク 編集

 
Wikipedia
ウィキペディアにもエウクレイデスの記事があります。