ロシアの諺
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ロシアの諺と慣用句。なお、ことわざはロシア語でパスローヴィツァпословица、単なる言い回しはパガヴォールカпоговоркаという。
А - Б - В - Г - Д - Е - Ж - З - И - К - Л - М - Н - О - П - Р - С - Т - У - Ф- Х - Ц - Ч - Ш - Щ - Э - Я
А
編集- 3コペイカ盗んだ奴は縛り首、50コペイカだと尊敬の的。
- Алтынного вора вешают, а полтинного чествуют.
- 食欲は食事の時に湧く。
- Аппетит приходит во время еды.
- 欲望はとどまることを知らない。ひとつの欲望が満たされると更なる欲望が出てくることの譬え。
Б
編集- 貧者が結婚すると夜が短くなる。
- Бедному жениться и ночь коротка.
- 幸せな結婚にはお金が不可欠。
- 貧困は恥ずべきことならず。
- Бедность - не порок.
- 猫がいなければネズミの好き放題。
- Без кота мышам раздолье.
- 監督者がいないと好き勝手なことができる。
- 日:鬼の居ぬ間の洗濯。
- 私がいないところで私が結婚していた。
- Без меня меня женили.
- 当事者であるはずの自分が知らないうちにいつの間にか決められていた。
- 苦労しなくては池から魚を釣りあげられない。
- Без труда не выловишь и рыбку из пруда.
- 楽して得られるものはない。
- 神は注意深い者を大切にする。
- Береженого Бог бережет.
- 天は自ら助くる者を助く。
- 「ベレジョーナヴァ・ボーフ・ベレジョート」と発音する。頭韻がある。
- 肘は近くにあるのに噛めない。
- Близок локоть, да не укусишь.
- できもしないことの譬え。一見すると簡単そうだが実は不可能だ。
- 病人にはハチミツすらおいしくないが、健康なら石だって食べられる。
- Больному и мед не вкусен, а здоровый и камень ест.
- 病気になるのは辛いことだ。
- 悪口は襟首にぶら下がらない。
- Брань на вороту не виснет.
- 悪口は無視してしまえば痛くも痒くもない。他人の悪口なんてどうせ言葉だけなんだから気にするな。
- 紙は何にでも耐えられる。
- Бумага все терпит.
- 書物や新聞記事を鵜呑みにするな。紙にはどんなことだって書けるのだから、活字になっているからといって内容が正しいとは限らない。
В
編集- 首吊り自殺した人の家ではロープの話をするな。
- В доме повешенного не говорят о веревке.
- 相手が触れてほしくないことをわざわざ話題にするな。セルバンテスの小説『ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』内の一節より。
- 発音:「ヴ・ドーミェ・パヴェーシェンナヴァ・ニェ・ガヴァリャート・ア・ヴェリョーフケ」
- どの家にもそれぞれのガラガラがある。
- В каждой избушке свои погремушки.
- それぞれの家にはその家のルールがある。人によって習慣は異なる。
- ガラガラ(погремуша)は、赤ん坊をあやすための玩具。
- 足中に真なし。
- В ногах правды нет.
- 立っていないで座ったらどうですか。人に座ることをすすめるさいのおどけた言い回し。ラテン語のことわざ「酒中に真あり(In vino veritas.)」を踏まえたもの。
- 同じ羽根の鳥は生まれない。
- В одно перо и птица не родится.
- 人はそれぞれ違う性質を持っている。
- 自分の巣穴ではネズミもライオン気取り。
- В своей норе и мышь себя львом чувствует.
- 自分より優れたものがいない環境ではケチな人間が威張る。
- 日:鳥なき里のこうもり。
- 生きている限り学べ。
- Век живи, век учись.
- 隼は飛び方を見ればわかる。
- Видно сокола по полету.
- どういう人かは、その人物の行動でわかる。
- 水が石を削る。
- Вода камень точит.
- 小さなことでもこつこつと続けていけば大きな結果となる。雨垂れ石を穿つ。
- 脚が狼を養う。
- Волка ноги кормят.
- 狼は自分の脚で歩いて餌を探さなければならない。自分から動かなければ、良いものは得られない。
- 髪は長く、知恵は短い。
- Волос долог, да ум короток.
- 女性を侮辱するときの表現。
- カラスはカラスの目を突っつかない。
- Ворон ворону глаз не выклюет.
- 同じ利益を共有するものは互いを裏切らない。
- おばあさん、ユーリの日だよ。
- Вот тебе, бабушка, и Юрьев день.
- なんてこったい。期待してたのにがっかりだ。ユーリの日は11月26日で、この日の前後だけは農奴の自由な移動が許されていた。それがいきなり禁止されたときの農奴の叫びより。
- 全ての者は神の下で歩き回っている。
- Все под богом ходим.
- どんなことでも起こりうる。誰に何があっても不思議ではない。
- どの野菜にも旬はある。
- Всякому овощу свое время.
- なにごともしかるべき時というものがある。
- 自分の頭より高くは跳べない。
- Выше головы не прыгнешь.
- 誰にでも限界はある。
- おでこより高いところに耳は生えてこない。
- Выше лба уши не растут.
- 誰にでも限界はある。
- 外国の修道院には(自国の)憲章を持っていかない。
- В чужой монастырь со своим уставом не ходят
- 郷に入っては郷に従え
Г
編集- 空腹は優れた料理人。
- Голод - лучший повар.
- 腹が減ってりゃ何でも美味い。
- 飢えは叔母さんではないからピロシキをくれたりしない。
- Голод не тетка, пирожка не поднесет.
- 困ったときは自分で何とかしろ。
- 悲しみは海ではないから、すっかり飲み干してしまえる。
- Горе не море, выпьешь до дна.
- 「ゴーリェ」(悲しみ)と「モーリェ」(海)で韻を踏んでいる。
- キノコ雨
- грибной дождь
- 天気雨。狐の嫁入り。日が差して温かいうえに雨が降って湿り気が多いとキノコがよく育ちそうだから。
Д
編集- 目から遠くなると、心に近くなる。
- Дальше с глаз - ближе к сердцу.
- 別れてしまった相手はいっそう慕わしく感じる。
- 贈られた馬の歯は調べないものだ。
- Даровому коню в зубы не смотрят.
- 人からの贈り物にケチをつけるな。
- 2×2=4
- Дважды два — четыре.
- 至極当然。誰もが知っている当たり前のこと。
- 日:犬が西向きゃ尾は東。
- 二頭の熊は同じ巣穴では暮らせない。
- Два медведя в одной берлоге не уживутся.
- 実力のあるものが二者いるとき、争いは避けられない。
- 二度の死はありえないが、一度は避けられぬ。
- Двум смертям не бывать, а одной не миновать.
- 危険を恐れず思い切って行動に移せ。
- いい言葉を聞けば猫だってご機嫌になる。
- Доброе слово и кошке приятно.
- 人はお世辞に弱いものだ。豚もおだてりゃ木に登る。
- 家では壁まで助けてくれる。
- Дома и стены помогают.
- 我が家ほど良い場所はない。
- お昼ごはんには匙が大切。
- Дорога ложка к обеду.
- どんなことにも、それにふさわしい時というものがある。
- 娘は他人の宝物。
- Дочь — чужое сокровище.
- 友は逆境にて知らる。
- Друг познается в беде.
- 貧の友は真の友。自分が本当につらい時にこそ、他人が自分をどう思っているかが明らかになる。
- バカにものを教えるのは、死んだ人間を治療するようなものだ。
- Дурака учить - что мертвого лечить.
- 日:バカにつける薬はない。バカは死ななきゃ治らない。
- バカは規則無用。
- Дуракам закон не писан.
- バカには何を言っても無駄。直訳すると「バカのために法律は書かれていない」。
- Дуракам закон не писан — дураками он написан.(「バカのために法律は書かれていない。バカによって書かれたのだ」)とも言う。これはおかしな法律や不条理なルールを批判するときにも用いられる。
- 種をまいたわけでも刈り取ったわけでもないのに、バカは湧いて出る。
- Дураков не сеют, не жнут, сами родятся.
Е
編集- サモワールを持ってトゥーラへ行く。
- Ездить в Тулу со своим самоваром.
- 余計なこと。無駄なこと。トゥーラはサモワール(ロシアの伝統的な湯沸かし器)製造で有名な都市。そこに自前のサモワールを持っていっても仕方ない。
- おばあちゃんにイチモツがついていたらおじいちゃんだったのになあ。
- Если бы у бабушки был (хуй), то она была бы дедушкой.
- 考えても仕方がない、無意味な仮定。死んだ子の歳を数える。かなり直截的な表現が含まれているので引用する際には「イチモツ」の部分(原文中の括弧を付した単語)を伏字にする方がよいが、そもそも使うべきでない。
- 自分の顔が歪んでいるなら鏡に腹を立てるな。
- Если у тебя кривое лицо, не сердись на зеркало.
- 本当のことを指摘されたとき、指摘した相手に腹を立てるのは見当違いだ。事実がそうなんだから仕方ない。
- キノコのピローグを食べても舌は歯の後ろにしまっておけ。
- Ешь пирог с грибами, держи язык за зубами.
- 親切にしてもらったからといって、いらないことを口に出すな。
Ж
編集- 人生を生き抜くということは、平地を横切るのとわけが違う。
- Жизнь прожить - не поле перейти.
З
編集- 尋ねたくらいで鼻はぶたれない。
- За спрос не бьют в нос.
- 困ったら人に頼れ。分からないことは聞け。
- 「スプロース」(問いかけ)と「ノース」(鼻)の押韻。
- バカに祈祷をやらせると、自分で頭に怪我をする。
- Заставь дурака Богу молиться, так он себе и лоб расшибет.
- 本質がわかっていない人間に形式だけ守らせてもろくなことはない。バカに無理やりお祈りをさせても、祈るというのは頭を上下させることだとしか理解できず、自分で勝手に頭をぶつける。
- 猫は自分が誰の肉を食べたのか知っている。
- Знает кошка, чье мясо съела.
- 悪い行いをしたものは、誰に対して悪をなしたのかちゃんとわきまえている。
И
編集- 火から炎へ
- из огня да в полымя
- 一難去ってまた一難。
- 金曜日の下から土曜日がはみ出てる
- из-под пятницы суббота
- 下着が上着の裾からはみ出している様子をからかう言い回し。
- 七面鳥も考えていたが結局はスープに入った。
- Индюк тоже думал, да в суп попал.
- 「考えたんだが~」という出だしで愚にもつかないことを言い始めた者をからかう表現。下手の考え休むに似たり。
К
編集- 狼はどんなに飼い馴らしても森ばかり見る。
- Как волка ни корми, он все в лес смотрит.
- 性格や本性というものはそう簡単に変わらない。
- 猫にはオモチャ、ネズミには涙。
- Кошке игрушки, а мышке слезки.
- 強者だけが楽しんでいても、弱者たちにとっては苦痛でしかない。
- 発音:「コーシケ・イグルーシキ・ア・ムゥィシケ・スリョースキ」
- 金を出した者が音楽をリクエストできる。
- Кто платит, тот и заказывает музыку.
- 力のある者がその場の状況を支配できる。
Л
編集- 森を開けば木っ端が飛び散る。
- Лес рубят — щепки летят.
- 何かを成し遂げるのに犠牲はつきもの。
- 甘い嘘より苦い真実のほうが良い。
- Лучше горькая правда, чем сладкая ложь.
- 遅くなっても、しないよりまし。
- Лучше поздно, чем никогда.
- 「神様お願いします」より「神様のおかげです」がいい。
- Лучше «слава богу», нежели «дай бог».
- 不確実なものより確実なものをよしとせよ。先の雁より今の雀。
- 橇で遊ぶのが好きなら、橇を運ぶことも好きになれ。
- Любишь кататься — люби и саночки возить.
- 詮索好きなワルワーラは市場で鼻をもぎ取られた。
- Любопытной Варваре на базаре нос оторвали.
- 他人のことをあれこれ知ろうとするな。
М
編集- チビよりチビなおチビちゃん
- мал мала меньше
- 小さな子どもがたくさんいる様子をおどけて表現する言い回し。
- 熊の親切
- медвежья услуга
- 余計なお世話。熊がハエを払おうとして老人を殴り殺してしまったというクルイロフの寓話より。
- エメリヤ、好きなだけ喋れ。お前の週だ。
- Мели, Емеля — твоя неделя.
- 勝手に言ってろ、俺には関係ない。
- 発音:「ミェーリ・エミェーリャ・トヴァヤー・ニェジェーリャ」
- 鐘の音はたくさんだが、撞いた数は少ない。
- Много звону, да мало толку.
- 大騒ぎのわりに原因は大したことがなかった。
- 日:大山鳴動鼠一匹。
- 仲良しが口げんか、ただ楽しんでるだけ。
- Милые бранятся - только тешатся.
- 仲がいいものどうしはけんかも楽しみのうち。けんかするほど仲がいい。
- 羊と向き合う勇者様、勇者と向き合うお前も羊。
- Молодец против овец, а против молодца и сам овца.
- 弱い羊を相手にしているときは勇敢な人物の気でいられるが、実際に優れた人と対峙すると自分の側が羊のようなものだ。自分より弱いものしかいないところでは実力のないものが威張り散らす。鳥なき里のこうもり。お山の大将。
- モスクワは涙を信じない。
- Москва слезам не верит.
- 泣いても現実は変わらない。泣き言で同情を買おうとしても無駄だ。かつてモスクワ大公国が税の軽減の嘆願をしりぞけたばかりか、見せしめとして嘆願者を処分さえしたという故事から。
Н
編集- 哀れなマカールに松ぼっくりがみんな落ちてくる。
- На бедного Макара все шишки валятся.
- ひどい事が重なるさま。痛い上の針。
- 泥棒の頭で帽子が燃える。
- На воре шапка горит.
- 悪事を働いたことがおのずから露見する。尻尾を出す。
- 他人のパンに向かって口を開けるな。早起きして自分で何とかしろ。
- На чужой каравай рот не разевай, а пораньше вставай да свой затевай.
- 他人の富や成功をうらやむのではなく、自分で努力して成し遂げろ。
- 命令法の動詞の語尾"вай"(発音は「ヴァーイ」)を中心として、"чужой"(「チュジョーイ」)"свой"(「スヴォーイ」)などと韻を踏んでいる。
- 全体の発音は「ナ・チュジョーイ・カラヴァーイ・ロート・ニ・ラジェヴァーイ、ア・パラーニシェ・フスタヴァーイ・ダ・スヴォーイ・ザティヴァーイ」
- 異国では隼もカラスと呼ぶ。
- На чужой стороне и сокола зовут вороною.
- 日::所変われば品変わる。
- 舌の上には蜂蜜、舌の裏には氷。
- На языке мед, а под языком лед.
- 口先では相手に好意的なことを言っているが、腹の底では相手を軽んじている。うわべは丁寧だが本心は残酷。面従腹背。
- 「蜂蜜」мед (ミョート)「氷」лед(リョート)の脚韻。
- キノコだと名乗った以上は編み籠に入れ。
- Назвался груздем, полезай в кузов.
- やりかけたことは最後まで責任を持ってちゃんとやれ。
- 暇になったおかみさんが子豚を買ってきた。
- Не было у бабы хлопот, так купила порося
- わざわざ自分から面倒を背負いこんだ。
- ネコはいつもマースレニッツァ(バター祭り)なわけではない。
- Не все коту масленица.
- 人生、楽なことばかりではない。このあとに", бывает и великий пост."(四旬大斎だってある)と続くこともある。
- 光れば金とは限らない。
- Не все то золото, что блестит.
- 家を買わずに隣人を買え。
- Не купи дом, а купи соседа.
- 近所付き合いの大切さを言い表したことわざ。
- 日::遠くの親戚より近くの他人。
- だまさないと商売はできない。
- Не обманешь — не продашь.
- 井戸につばを吐くな。いつかは飲む時が来る。
- Не плюй в колодец. Пригодится воды напиться.
- わざわざ敵を増やすようなことはするな。
- 顔で水飲むわけじゃなし。
- Не с лица воду пить.
- 容貌の美醜には何の意味もない。大切なのは心。顔から水を飲むわけではないのだから、外見的な美しさに重きを置いて人を選ぶな。
- 戦いに行くときに自慢をするな。
- Не хвались, идучи на рать.
- 何かを誇るならその結果が出てからにしろ。
- 魚でもなけりゃ肉でもない
- ни рыба ни мясо
- 没個性的で取り柄がなく、中途半端なもの。
- 招いていないのに来る客はタタール人よりひどい。
- Незваный гость хуже татарина.
- タタールの軛(くびき)を踏まえたことわざ。いきなり来る客ほど迷惑なものはない。
- カワカマスに泳ぎを教えるな。カワカマスには自分の流儀が分かっている。
- Не учи плавать щуку, щука знает свою науку.
- その道のベテランに何かを教えようとしても意味がない。
- 日:釈迦に説法。
- 新しい箒はきれいに掃く。
- Новая метла чисто метет.
- 新たに着任した上官はこまごまとうるさい。
- 夜はどの猫も灰色に見える。
- Ночью все кошки серы.
- 周囲と見分けがつかないものの譬え。
- 必要は法など知らぬ。
- Нужда закона не знает.
- どうしてもしなくてはならないことがあると、法律など省みられなくなる。
О
編集- 好みは議論無用。
- О вкусах не спорят.
- 好みや趣味に関しての議論は不毛だ。好きなものは好き、嫌いなものは嫌いなのだから話し合っても仕方ない。
- 一人はみんなのために、みんなは一人のために。
- Один за всех, все за одного.
- ツバメ一羽は春を作らず。
- Одна ласточка весны не делает.
- ほんの少しの兆候だけで結論を急ぐな。
- 一方の足はこっち、もう一方はあっち。
- Одна нога здесь, другая там.
- 迅速に移動したり行動したりする様子。指示を受けてすばやく実行するさま。
- 目には目を、歯には歯を。
- Око за око, зуб за зуб.
- 鷲は蝿を捕らえず。
- Орел мух не ловит.
- 大人物はケチな目的を追い求めたりしない。
- エラスムスの格言"Aquila non captat muscam."の翻訳。
- 1コペイカのろうそくでモスクワは焼け落ちた。
- От копеечной свечи Москва загорелась.
- ほんの小さな原因が重大な結果につながった。
- 日:蟻の穴から堤も崩れる。
- 好奇心のせいで猫がくたばった。
- От любопытства кошка сдохла.
- 好奇心は猫をも殺す。他人のことをあれこれ詮索するな。
- 頭陀袋と牢屋は無縁と請け合うな。
- От сумы да тюрьмы не зарекайся.
- 人生、何が起こるかわからない。一寸先は闇。「頭陀袋」と訳した単語(сума)は鞄を意味する古い言葉で、乞食が持ち歩く袋のこと。自分の身には決して起こらないことだと思い込んでいても、いつ財産を失い、いつ牢屋に放り込まれるかわからない。
П
編集- 初めて焼いたブリンは塊になる。
- Первый блин комом.
- ブリンはロシアの薄焼きパンケーキ。どんなことでも最初の一回は失敗する。
- 鞭で斧は砕けない。
- Плетью обуха не перешибешь.
- 権力や強者には逆らえない。
- 日:泣く子と地頭には勝たれぬ。
- へたな踊り手は金玉まで邪魔をする。
- Плохому танцору и яйца мешают.
- 弘法筆を選ばず。上手な人は道具や周囲の環境に文句を言わないものだ。下手なくせに言い訳ばかりするのは、踊りが下手な人物が自分の睾丸を理由にするようにこっけいだ。
- 穀粒も積もれば山となり、滴もたまれば海になる。
- По зернышку ворох, по капельку море.
- 服装で迎え入れられ、知恵で追い出される。
- По одежке встречают, по уму провожают.
- 人は外見よりも能力や人間性が大事。いくら見た目がよくて受け入れられても、何もできなかったりダメ人間だったりしたらそのうち相手にされなくなってしまう。
- 動かぬ石の下に水は流れない。
- Под лежачий камень вода не течет.
- 自分から行動しないと何も得られるものはない。
- 馬を憐れんだ狼が、尻尾とたてがみだけ食べ残してやった。
- Пожалел волк кобылу, оставил хвост да гриву.
- 同情しているふりだけしておいて、行動は残酷。うわべだけの同情。
- 月曜日は重たい日。
- Понедельник — день тяжелый.
- また月曜日か。休みが終わって一週間が始まるときの、あの何ともいやな気分を言い表したもの。
- ふるいの中にモスクワを見せる
- показать Москву в решето
- 人をだます。からかう。
- 試みは拷問ではない。
- Попытка - не пытка.
- 臆さず試すように勧める時の言い回し。
- 発音は「パプゥィトカ・ニェ・プゥィトカ」で、「パプゥィトカ」は試みること、「プゥィトカ」は拷問を意味する。
- けんかの後でゲンコツを振るうな。
- После драки кулаками не машут.
- ことが起きてしまってから状況を変えようとしても無駄だ。
- 急ぐ者は笑い者になる。
- Поспешит, да людей насмешит.
- 日:急いては事を仕損じる。急がば回れ。
- 真実は目に痛い。
- Правда глаза колет.
- 現実を直視するのはつらいことだ。
- 無為はあらゆる不道徳の母。
- Праздность - мать всех пороков.
- 人は暇になるとろくなことをしない。小人閑居して不善をなす。
- 人の失敗は許してやれ、だが自分には容赦するな。
- Прощай ошибки чужим, но себе никогда.
- 日:人の振り見て我が振り直せ。
- 愛は過ぎ去り、トマトもしなびた。
- Прошла любовь, завяли помидоры.
- 百年の恋も冷めた。相手に対する愛情がなくなった。
- 驚いたカラスは茂みを恐れる。
- Пуганая ворона и куста боится.
- かつてひどい目にあった者は必要以上に用心深くなる。
- 日:羹に懲りて膾を吹く。
- 酔っ払いには海も膝まで。
- Пьяному море по колено.
- 酔った人間は気が大きくなり、自分の能力を過大評価しがち。
Р
編集- 仕事は狼ではないから森に逃げたりしない。
- Работа не волк, в лес не убежит.
- 焦ることなく機が熟するのを待て。急いては事を仕損じる。
- 手が手を洗う。
- Рука руку моет.
- 世の中、持ちつ持たれつ。
- 英語など多くの言語では相互協力を是とする意味合いだが、ロシア語の諺では主に、ともに悪事を働いた者同士が互いを庇いあうという文脈で用いる。あまりいい意味ではない。
- もとはセネカの格言。ラテン語表記:"Manus manum lavat."
- 魚は頭から腐る。
- Рыба с головы гниет.
- 組織は上層部からだめになっていく。
С
編集- オオカミと暮らすならオオカミのように吠えろ。
- С волками жить --- по-волчьи выть.
- その土地の習慣にしたがって暮らせ。郷に入りては郷にしたがえ。
- 「ス・ヴォルカミ・ジーチ パ・ヴォルチイ・ヴィーチ」
- ミールごとに糸を持ち寄れば、裸の人にシャツを作ってあげられる。
- С миру по нитке — голому рубаха.
- 少しずつでも一人一人が助けあえば困った人を救える。
- ミールは帝政ロシア時代の農村共同体。
- 自分の荷物は重くない。
- Своя ноша не тянет.
- 好きでやっていることや自分のためになることは苦にならない。
- 自分のシャツが身体に一番近い。
- Своя рубашка ближе к телу.
- 自分が一番かわいい。人はまず自分のことを第一に考えるものだ。
- 七人は一人を待たず。
- Семеро одного не ждут.
- 少数の都合のために多数の動きを規制されてはたまらない。一人の都合で全体を振り回すな。
- 七つの苦悩に一つの答え。
- Семь бед, один ответ.
- 七つの辛酸を舐めても、結局は死ぬという一つの答えに行き着く。ならばとことんやってやれ。
- 日:毒食わば皿まで。
- 七たび測って一度に裁て。
- Семь раз отмерь, один раз отрежь.
- 日:念には念を入れよ。
- 心が心に知らせを伝える。
- Сердце сердцу весть подает.
- 親しい者は心が通じ合うものだ。以心伝心。
- どんなに頑張ったところでアヒルは白鳥になれない。
- Сколько утка ни бодрись, лебедем не быть.
- 氏素性は変えられない。
- 言葉はスズメではないから、飛び立ったら捕まえられない。
- Слово — не воробей, вылетит — не поймаешь.
- 一度でも口にしたことは取り消せないから言葉に気を付けろ。発言する前にちゃんと考えろ。
- 頭を取ったら髪の毛を惜しんで泣くな。
- Снявши голову, по волосам не плачут.
- 首から上が取れたらもはや髪の毛も失われるが、それを嘆いても仕方ない。起きてしまったことは取り返しがつかない。覆水盆に返らず。
- 犬が吠え、風が伝える。だがキャラバンは進む。
- Собака лает — ветер носит, а караван идет.
- 他人の言うことを気にするな。中傷や噂なんて無視して結構。
- 兵士は眠り、兵役は続く。
- Солдат спит — служба идет.
- 自分のするべきことをせずだらだらしているうちに仕事の時間が終わる。勤務時間中(あるいは勉強時間中)なのにろくなことをしないで時間だけ浪費する。締め切りまで何もせずに遊んでばかりいる。
- どんな生活をしていようが、一定の期間さえやり過ごせば兵役はいつか終わるということから。
- 「サルダート・スピート スルージバ・イジョート」と発音する。
- 犬は犬死にするものだ。
- Собаке собачья смерть.
- ざまあみろ。お前にはそのような悪い結果がふさわしい。自業自得。
- 屑が埃を笑う。
- Сор над пылью смеется.
- 日:目糞鼻糞を笑う。
- ありがとうで腹は膨れない。
- Спасибом сыт не будешь.
- お礼の言葉だけでなく見返りもよこせ。
- 泣くまで議論しろ、だが賭けはするな。
- Спорь до слез, а об заклад не бейся.
- 老齢は喜びならず。
- Старость не радость.
- 歳はとりたくないもの。
- 発音:「スターラスチ・ニェ・ラーダスチ」
- 一人の旧い友は二人の新しい友よりよい。
- Старый друг лучше новых двух.
- 発音:「スタールゥイ・ドゥルーク・ルーチシェ・ノーヴィフ・ドゥヴーフ」
- 老いたる馬は溝に躓かず。
- Старый конь борозды не испортит.
- 経験豊富な者は失敗しない。老いたる馬は道を忘れず。老馬の智。
- 恐怖は何度もあるが、死は一度だけだ。
- Страхов много, а смерть одна.
- 毒食わば皿まで。ままよ。非常に危険なことに思い切って手を出すとき、覚悟を決めてこう言う。
- 乾いている匙は口に不快。
- Сухая ложка рот дерет.
- 喜ばれるものをプレゼントしないと相手には良く思われない。
Т
編集- われわれのいないあの場所はすばらしい。
- Там хорошо, где нас нет.
- 他人のものは良く見える。
- 日:隣の花は赤い。
- より静かに進めば、より遠くまで行ける。
- Тише едешь, дальше будешь.
- 急ぐ必要があるときこそ落ち着いて行動しろ。急がば回れ。
- 「ティーシェ・ィエージェシ・ダリシェ・ブージェシ」
- まさかり仕事
- топорная работа
- やっつけ仕事。仕上がりが雑な仕事。
У
編集- 痛いところがある人は、そのことを口に出すものだ。
- У кого что болит, тот о том и говорит.
- 気にしていることは口をついて出てしまう。
- 発音:「ウ・カヴォー・シトー・バリート トート・ア・トーム・イ・ガヴァリート」
- 乳母が7人いると子供に目が行かなくなる。
- У семи нянек дитя без глазу.
- 責任者が多いと互いが互いを頼って却って無責任になる。
- 日:船頭多くして船山にのぼる。
- 恐怖には大きな目。
- У страха глаза велики.
- 怖がっている人にとっては、周囲のものがみな恐ろしく感じる。
- フィーリャの家で酒を飲み、そのうえフィーリャをぶん殴る。
- У Фили пили, да Филю ж и побили.
- 世話になった人間に対してひどい仕打ちをする。
- 日:恩を仇で返す。
- ウリータは行く、そのうちに着く。
- Улита едет, когда-то будет.
- いつか結果がでるだろう。期待せずに気長に待つときに用いることわざ。
- ウリータは女性の人名だが、その指小形であるウリートカ(ウリータちゃん、の謂)はデンデンムシを意味する。
- 発音:「ウリータ・ィエージェット カグタータ・ブージェット」
- 賢い嘘は愚かな真実に勝る。
- Умная ложь лучше глупой правды.
- 日:嘘も方便。
- おせっかいなバカは敵より危険。
- Услужливый дурак опаснее врага.
- なにも考えずにいいことをしようとしても却って迷惑になる。
- 溺れる者は藁をもつかむ。
- Утопающий и за соломинку хватается.
- 朝は夕方より賢い。
- Утро вечера мудренее.
- 寝る前にあれこれ考えるな。
- 知恵は素晴らしいが二つだとなおよい。
- Ум хорошо, а два лучше.
- 難しいことを一人で考えるな。三人寄れば文殊の知恵。
Ф
編集- フェドートだけど本人じゃない。
- Федот, да не тот.
- 他の人と勘違いしていることをからかう言い回し。
- 発音:「フェドート・ダ・ニ・トート」
Х
編集- パンと塩を食べても真実を言え。
- Хлеб-соль ешь, а правду режь.
- 世話になった人や恩のある人に対してでも、言うべきことは言え。東欧におけるパンと塩は客人に対するもてなしの象徴。
- すてきなマーシャ、でも他人。
- Хороша Маша, да не наша.
- 他の人と勘違いしている。それは本物じゃない。
- 「ハラシャー・マーシャ・ダ・ニ・ナーシャ」の発音から分かるように、「シャ」の脚韻がある。「ナーシャ」は「私たちの」の意味(英語のourに該当)。
- 善き争いより悪しき平和。
- Худой мир лучше доброй ссоры.
Ц
編集- ヒヨコは秋に数えるものだ。
- Цыплят по осени считают.
- 利益を得ていないうちからその先のことを考えるな。
- 日:穴の貉を値段する。捕らぬ狸の皮算用。
Ч
編集- 一時間の忍耐で百年の命。
- Час терпеть, век жить.
- 日:苦は楽の種。
- 人間は誤るもの。
- Человеку свойственно ошибаться.
- 起こることは避けられないこと。
- Чему быть, того не миновать.
- 起こるべきことは起こる。必然的にそうなるようなことは、どうやっても回避不可能。
- 過去のことは過ぎたこと、一面に草ぼうぼう。
- Что было, то прошло и быльем поросло.
- それはもう大昔のことだ。今となっては昔のことになってしまった。
- ペンによって書かれたものは、まさかりをもってしても打ち砕けない。
- Что написано пером, того не вырубишь топором.
- 一度でも世に発表してしまったことは取り消せない。ペンは剣よりも強し。
- 持っているものは大切にせず、失ったものを嘆く。
- Что имеем — не храним, потерявши — плачем.
- 何かを失って初めて、それがどれだけ大切なものだったか分かる。
- 母親が頭に詰め込んだものは、父親にも叩き出せない。
- Что мать в голову вобьет, того и отец не выбьет.
- 子供の教育において母親の役割は大きい。
- 蒔いた分は自分で刈り取れ。
- Что посеешь, то и пожнешь.
- 自分が原因となったのなら自分で責任を取れ。自業自得。
- ロシア人には良くてもドイツ人には死。
- Что русскому хорошо, то немцу — смерть.
- 人それぞれ。文化によって価値観や考え方は違うものだ。蓼食う虫も好き好き。
- 荷馬車から落ちたものは、失われてしまったもの。
- Что с возу упало, то пропало.
- してしまったことは取りかえしがつかない。
- しらふの頭の中にあるものは、酔っぱらいの舌の上にある。
- Что у трезвого на уме, то у пьяного на языке.
- 酔うと余計なことまでしゃべってしまう。
Ш
編集- 錐は袋に隠せない。
- Шила в мешке не утаишь.
- 隠し事はいつか表沙汰になる。日本語の「嚢中の錐」とは意味が異なる。
- 発音:「シーラ・ヴ・メシケー・ニェ・ウタイーシ」
- 錐で海を温めようとするな。
- Шилом моря не нагреешь.
- 方法がトンチンカンだと成果はゼロ。
Щ
編集- シチーとカーシャはわれらの糧。
- Щи да каша — пища наша.
- シチーはロシアのスープ料理で、シチューとは別物。カーシャは粥。どちらもロシアの標準的な家庭料理で、日本における「ごはんと味噌汁」に該当する。ロシアの食文化においてシチーとカーシャがいかに重要であるかを表すことわざ。「シチーとカーシャはわれらの母」Щи да каша — мать наша. とも。
Э
編集- もう昔の話だし、でたらめだ。
- Это было давно, и неправда.
- 都合の悪い過去を指摘されたときにおどけて使う表現。
Я
編集- Я(ヤー)はアルファベットの最後の文字。
- «Я» — последняя буква в алфавите.
- あまり自分をうるさく主張するな。
- ロシア語を表記するキリル文字は全部で33文字から成り立っている。このキリル文字をアルファベット順に並べると最後に来る文字がЯ(ヤー)だが、これは一人称単数主格を表わす代名詞でもある(英語のIに該当)。
- 無理やり日本語にすると「『私』のワは、あいうえおの最後の文字。」
- リンゴの実はリンゴの木の近くに落ちる。
- Яблоко от яблони недалеко падает.
- 親より優れた子供は生まれない。あの親にしてあの子あり。瓜の蔓にはナスビはならぬ。蛙の子は蛙。親子ともに同じ欠点がある場合のことわざで、相手の親子を褒める意味では使えない。
- 舌に骨なし。
- Язык без костей.
- ぺらぺらとおしゃべりばかりしている人をからかっていう言葉。口から先に生まれる。
- 舌がキエフに連れて行く。
- Язык до Киева доведет.
- 分からないことは人に聞け。
- 私の舌は私の敵。
- Язык мой — враг мой.
- 日:口は禍の門。
- 発音すると「イズゥィーク・モイ ヴラーク・モイ」と韻を踏む。
- 舌を使っておしゃべりしても、腕に意志を与えるな。
- Языком болтай, а рукам волю не давай.
- 話し合って平和な解決策を探せ。暴力に訴えるな。
- 卵には鶏を教えられない。
- Яйца курицу не учат.
- 自分より優れた人間に説教をするな。若輩者は年長者に意見できない。
- 日:釈迦に説法。