大和物語

平安時代に成立した中古日本の物語

第一段

編集
  • 亭子(ていじ)の帝いまはおりゐたまひなんとするところ、弘徽殿(こきでん)のかべに、伊勢の御(ご)のかきつけける、
    わかるれどあひもおしまぬ百敷(もゝしき)を見ざらむことのなにか悲しき
  • とありければ、みかどご覧じて、そのかたはらにかきつけさせたまうける、
    身ひとつにあらぬばかりををしなべてゆきかへりてもなどか見ざらむ
  • となむありける。