「宇津ノ谷峠」の版間の差分

[[w:宇津ノ谷峠|宇津ノ谷峠]]（うつのやとうげ）、'''宇津の山'''は、静岡県静岡市駿河区宇津ノ谷と藤枝市岡部町岡部坂下の境にある[[峠]]。

*宇津の山にいたりて、わが入らむとする道は、いと暗う細きに、つたかへでは茂り、物心ぼそく、すずろなるめを見ることと思ふに、<ruby><rb>修行者</rb><rp>〔</rp><rt>すぎゃうじゃ</rt><rp>〕</rp></ruby>あひたり。「かかる道はいかでかいまする」といふを見れば、見し人なりけり。京に、その人の御もとにとて、文書きてつく。<br />　駿河なる宇津の山べのうつゝにも夢にも人にあはぬなりけり --『[[伊勢物語]]』

*宇津の山を越ゆる程にしもれば、阿闍梨の見知蔦楓は茂りたる山伏行きあひたり。「夢にも人を」などて、昔をわざとまねびたらん心地して、いとの跡絶えず。彼の業平が<ruby><rb>珍修行者</rb><rp>〔</rp><rt>めづらすぎゃうじゃ</rt><rp>〕</rp></ruby>かに、をかことづてしくもけむ程は、<ruby><rb>哀何処</rb><rp>〔</rp><rt>あはれいづく</rt><rp>〕</rp></ruby>にもやさしくも覚ゆ。急ぐ道なるらむと見行く程に［中略］峠といふ所に到りて、大きなる卒塔婆の年経にけると言へば見ゆるに、文歌どもあまたはえ数多書かず。たゞやむごとなき所一つけたる中にぞ、<ruby><rb>音信<br /rb>　吾妻路はこゝをせにせむ宇津の山あはれも深し蔦のした道<rp>〔<br /rp><rt>おとづ詠める、心とまりて覺ゆれば、其の傍に書きつけし、<br /rt><rp>〕</rp></ruby>れ聞ゆ　我もまたこゝをせにせむ宇津の山分けて色ある。つたのした露 --『東関紀行』