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Aphaia (トーク | 投稿記録)
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などです。これはそれぞれ排他的です。
私個人としては、法にかなった方針をもつことがプロジェクトの成功の第一の基盤だと考えますが、一方で過度に自粛することも好ましくないと思っています。ですので、法的な見地から妥当な方針をとることを最優先にし、可能性が複数あるところではコンテンツの発展に寄与しやすい解釈を取ることができるといいなと思います。ですがわたくし自身は法律には詳しくありません。みなさまのお知恵を拝借できれば幸いです。--[[利用者:Aphaia|Aphaia]] | [[m:Translation requests/WQ/2/Ja:|<font color=lightseagreen>WQ2翻訳中</font>]] | [[User talk:Aphaia|会話]] 2005年6月25日 (土) 21:55 (UTC)
 
: いわゆる知的財産権の属地主義と国際私法との関係の問題は学説も多岐にわたり非常にややこしいことになっているのですが、僕の理解している範囲で考えてみます。(少々難解な話になってしまいますが。。)
: 国際的な通説とされている立場は、著作権の属地的効力(ある国の領域内でのみ効力を持つ)を前提に、ベルヌ条約5条2項が「利用行為地法」の適用を規定していると考えています。この利用行為地とは、著作物が現実に利用されて、その利用について保護を与えることが必要とされている地(領域)のことです。
: そこで次に、インターネットによって著作物がやり取りされる時に「利用行為」とは何かということが問題となるわけですが、これについては、著作物をサーバ上に複製する行為と、それと同時に送信可能化し、そして現実に公衆送信する行為が「利用行為」であると考えられています。
: したがって、通説的な考えからは、サーバ上へ複製し送信するという行為が行われている地、すなわち「発信地」(発信国)が利用行為地であるという帰結が導かれることになります。
: ですがこれを頑なに貫き通すと、サーバが著作権の保護が弱い国に置かれている場合に「コピーライトヘイブン」の問題が生じるため、この考え方は修正するべきではないかという批判が有力に唱えられているのが現状です。
 
: そこでこれを批判する有力説は、著作権の属地的効果という原則から出発するのではなく、国際私法的なアプローチで問題を処理できないかと試みます。
: そしてベルヌ条約の同じ条文に抵触法のルールを読み込んで、「保護が要求される同盟国」とは著作権侵害という不法行為によって損害結果が発生した「損害発生地」のことだと解釈し、そしてそれはサーバから送信された著作物が受信される「受信地」(受信国)であると捉えます。
: 理論構成はどうあれ、要するに発信国法によるという通説の結論が妥当でないので、受信国法だと考えるわけです。
: ですが、インターネットの情報は世界各国で受信されるので、この考えを推し進めるのであれば、世界中の著作権法を考慮しないといけないという非現実的な事態が生じます。
 
: というところで、発信国法主義もまずいし、受信国法主義もまずいし、どうしたものか、というのが現在の学説の陥っているジレンマだと言ってよいでしょう。
: なのでこういうルールを考える時にこれが最適だというような断言はできないのですが、少なくとも発信国法と受信国法の両方を考えておけば、比較的安心であるとは言って良さそうです。
 
: そこで発信国と受信国とはそれぞれどこであるのかを考えないといけませんが、発信国についてはサーバ所在地であるアメリカ合衆国であるといえるでしょう。(もっとも、世界中にキャッシュサーバが広がっている場合にアメリカ合衆国だけを発信国と考えてよいのかという問題がありますが、その場合でも財団が存在し、管理しているアメリカ合衆国のサーバがやはり主要なサーバであるといえると思います。)
: 次に受信国ですが、これは先ほど述べたように世界各国ということがありえます。しかし「読者の大半が日本国内に居住する日本人であるという想定のもとに」日本に限定するという現在の草案の判断を支持したいと思います。
: というのは、公衆送信と言っても、それがある特定の層を想定して送信しているのであれば、受信するのも専らその特定の層に限られるだろうと考えられるからです。(田村善之『著作権法概説』〔第2版〕568頁)
: また日本の裁判例ですが、MP3ファイルの共有についてサービス提供会社である日本MMOが訴えられたファイルローグ事件の控訴審判決(東京高裁平成17年3月31日判決、[http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/21EC5FE5470A57A749256FD900290A5F/?OpenDocument 平成16(ネ)405]/[http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/48E2AE72184DF7B149256FD90036AE48/?OpenDocument 平成16(ネ)466])では、日本MMO(一審被告)が、「サービスを提供していたサーバはカナダにあるのでカナダ法を適用すべきだ(そしてカナダ著作権法には送信可能化権の規定はないので、問題となっている送信可能化は違法ではない)」というようなことを言っているのに対し、裁判所は「日本MMOが日本法人であり、運営していたサイトが日本語で記述されており、ユーザが使用していたクライアントソフトも日本語で記述されていることから、ファイルの送受信のほとんどは日本国内で行われていると認められる」とし、また「サーバがカナダにあるといっても、サービスを稼動・停止させる決定は日本MMOが行える」と続け、「以上からサーバはカナダにあるものの、サービスによる著作権侵害は実質的に日本国内で行われたものということができる(なので日本法が適用される)」と判断しています。(註:鉤括弧内は判決文そのままではなく、それを分かりやすく書き直したものです。)
 
: 以上から、さしあたりアメリカ法と日本法を考慮すれば良いというのが私見ですが、これに基づいて冒頭の「日本法とアメリカ法の規定が違う場合に、どちらが適応されるべきか。」という疑問に答えるなら、これはどちらか片方を選択的に適用するような問題ではなく、両方を重畳的に適用すべき問題ではないかと思います。
: つまりアメリカ法と日本法を考慮すると言った以上、その両方で合法となるような運用が行われるべきであると思います。
: 従って、「死後70年たっていない場合、一律にPDでないものとして投稿を自粛する。」という方向での運営が(一応の安心ということを重視するならば)望ましいのではないかと個人的には考えます。
 
: というところまでを前提とした上で、Aphaiaさんの疑問は、でも本当にアメリカ法を考慮する必要があるのか、という点にあるのだと思います。
: これはもっともな意見で、日本人が運営し、日本語で情報を提供し、対象とする閲覧者層もほとんど日本人に限られるというのに、ただ単にサーバがアメリカにあるというだけでアメリカ法に服さないといけないのは奇妙に思われます。
: ですが、アメリカに所在する財団が主導するプロジェクトのひとつであること、他言語で展開され相互に交流しており日本語版だけで独立しているわけではないこと、権利を侵害されたとする人にとっては個別の匿名ユーザよりも財団に責任を問うのが容易であることなどを考慮すると、一概に「単にサーバがアメリカにある」というだけではないのかなとも思います。
: そして冒頭で述べたように現在の通説からするとサーバ所在地であるアメリカ法こそが適用される可能性が高いこともあり、これを考慮しないという判断をするのには躊躇せざるを得ません。
: (これがコンテンツの発展に寄与しない解釈であることは明らかですが、僕の知識で考えるとどうしてもこの結論になってしまいます。誰か詳しい方が説得力を持って反論してくださると良いのですが。。)[[利用者:Carbuncle|Carbuncle]] 2005年6月28日 (火) 19:08 (UTC)
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