「世阿弥」の版間の差分
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**『井筒』シテ。[[伊勢物語]]「筒井筒」の段を本説とする。
*迷ひをも。照らさせ給ふ御誓ひ。げにもと見えて[[月|有明]]の。行方ハ西乃山なれど眺めハ四方乃[[秋]]の空。松の聲のみ聞ゆれども。嵐は何處とも。定めなき世の[[夢]]心。何乃音にか覚めてまし。何乃音にか覚めてまし。
**『井筒』シテ。
*<font size=-2>地</font> さながら見みえし。昔男の。冠直衣ハ。女とも見えず。男なりけり。[[在原業平|業平]]の面影。<font size=-2>
**『井筒』
*思はじと思ふ心も弱るかな。声も枯野の虫の音の。乱るゝ草の花心。風狂じたる心地して。病の床(ゆか)に伏し沈み。遂に空しくなりにけりけり。
**『砧』地歌
*<font size=-2>シテ</font> 三瀬川沈み。果てにし。うたかたの。哀はかなき身の行くへかな。標梅花の光を並べては。娑婆の春をあらはし。<font size=-2>地</font> 跡のしるべの燈火は。<font size=-2>シテ</font> 真如の秋の。月を見する。さりながらわれは邪婬の業深き。思の煙の立居だに。やすからざりし報の罪の。乱るゝ心のいとせめて。獄卒阿防羅刹の。笞の数の隙もなく。うてやうてやと。報の砧。怨めしかりける。因果の妄執。<font size=-2>地</font> 因果の妄執の思の涙。砧にかゝれば。涙はかへつて。火焔となつて。胸の煙の焔にむせべば。叫べど声が出でばこそ。砧も音なく。松風も聞えず。呵責の声のみ。恐ろしや。<font size=-2>上歌</font> 羊のあゆみ隙の駒。うつりゆくなる六つの道。因果の小車の火宅の門を出でざれば。廻り廻れども。生死の海は離るまじやあぢきなの憂世や。<font size=-2>シテ</font> 怨は葛の葉の。<font size=-2>地</font> 怨は葛の葉の。かへりかねて執心の面影の。はづかしや思ひ夫の。二世と契りてもなほ。末の松山千代までと。かけし頼はあだ波の。あらよしなや空言や。そもかかる人の心か。
**『砧』
*法華読誦の力にて。幽霊まさに成仏の。道明かになりにけり。これも思へばかりそめに。うちし砧の声のうち。開くる法の華心。菩提の種となりにけり。菩提の種となりにけり。
**『砧』
=== 能楽書 ===
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