杜牧

杜牧（と ぼく、803年（貞元19年） - 853年（大中6年））は中国、晩唐期の詩人。

杜牧

引用

• 広々とした平野のあちらこちらで鴬がないて、紅い花が新緑に映えている。／川沿いの村や山里の酒屋の旗が、春風にたなびいている。／南朝時代以来のたくさんの寺が立ち並び／多くの楼台が春の霧雨の中に煙っていることだろう。 -- 江南の春（江南春）

  千里鴬啼緑映紅　千里鶯啼いて緑紅に映ず
  水村山郭酒旗風　水村山郭酒旗の風
  南朝四百八十寺　南朝四百八十寺
  多少樓臺烟雨中　多少の楼台烟雨の中

• 車を停めてなにをするでもなく楓林の夕べを味わえば、／霜に焼けた葉は春の花よりなお紅い。-- 山道を行く（山行）

  停車坐愛楓林晩　車を停めて坐（そぞ）ろに愛す楓林の晩
  霜葉紅於二月花　霜葉は二月の花より紅なり

  • 二月は陰暦二月。陽暦三月から四月に相当。

• いまでは髪も白くなり禅寺の椅子に座して、／花を散らす風に茶の煙がそよぐのを眺めている。-- 禅寺で詩を作る（題禅院）

  今日鬢絲禪榻畔　今日鬢（びん）糸禅榻の畔
  茶烟輕颺落花風　茶烟軽く颺（あ）がる落花の風

楓橋

• ただ、君と別れたときのことだけは今も忘れない。／夕もやの中秋の冷たい雨が降り楓橋（ふうきょう）を通り過ぎたときのことを。-- 呉中の馮秀才を思う（懷呉中馮秀才）

  唯有別時今不忘　唯（ただ）別時の今に忘れざる有り
  暮煙秋雨過楓橋　暮煙秋雨楓橋を過ぐ

  • 柳橋は中国の歴史的地名。蘇州郊外に位置する。

• 春の盛りの清明の頃、こやみなく雨が降る中を／旅行けばどうしても気がめいってしまう。／「ちょっと、酒屋はどの辺にあるのかな」／牧童に訊けば遥かに霞む杏の花咲く村を指した。-- 清明

  清明時節雨紛紛　清明の時節雨紛紛
  路上行人欲斷魂　路上の行人魂を断たんと欲す
  借問酒家何處有　借問す酒家は何処にか有る
  牧童遙指杏花村　牧童遙に指す杏花の村

  • 杜牧の初期の詩文集に収録されず、南宋期に初めて杜牧の作として登場する。このため別人の作とする学説もある。
  • 杏花村は安徽省貴池県杏花村と山西省汾陽県杏花村の二説がある。

杜牧に関する引用

• 杜牧が早行の残夢、小夜の中山に至て忽驚く。
  馬に寝て残夢月遠し茶の煙 --松尾芭蕉『野ざらし紀行』