長塚節(1879年4月3日 - 1915年2月8日)
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- 鬼怒川の蓼かれがれのみぎはには 枸杞の実赤く冬さりにけり
- 鬼怒川の冬のつつみに蒲公英の 霜にさやらひくきたたず咲く
- もののふの過ぎしいそ回(わ)のあたなみを勿来の関と人はいふなり
- ひたむきにいのち生きむとする君の竹の話もききにしものを
- 松の葉の帽子に落ちししづけさを君は詠みしかもこのしづけさを
- 鶏頭の赤かりし歌はおもほへて病院の門を入ることもなし
- 時雨れ来るけはひ遙かなり焚き棄てし落葉の灰はかたまりぬべし
烈しい西風が目に見えぬ大きな塊をごうつと打ちつけて又ごうつと打ちつけて皆痩こけた落葉木の林を一日苛め通した。木の枝は時々ひうひうと悲痛の響を立てゝ泣いた。(冒頭より)