鶴彬
日本の小説家、政治犯
鶴彬(1909年 - 1938年)、日本の川柳作家。
川柳
編集- 俺達の血にいろどつた世界地図
- 飢迫る蟻米倉をくつがへし
- 軍神の像の真下の失業者
- 毒瓦斯が霽(は)れて占領地の屍
- 血税に上る兵工廠の煙
- 指のない手に組合旗握りしめ
- 稼ぎ手を殺し勲章でだますなり
- 肺を病む乳房にプロレタリアの子
- 血を喀いて坑をあがれば首を馘り
- 昼業と夜業夫婦をきりはなし
- 足をもぐ機械だ手当もきめてある
- 孫までも搾る地主の大福帳
- 奪はれた田をとりかへしに来て射殺され
- 銃剣で奪つた美田の移民村
- ふるさとは病ひと一しょに帰るとこ
- 血を吸ふたままのベルトで安全デー
- 転地すれば食へぬ煙の下で病み
- 嫁入りの晴衣こさえて吐く血へど
- ベルトさへ我慢が切れた能率デー
- 生命捨て売り出て今日もあぶれ
- みな肺で死ぬる女工の募集札
- 吸ひに行く―姉を殺した綿くずを
- ざん壕で読む妹を売る手紙
- 修身にない孝行で淫売婦
- 待合で徹夜 議会で眠るなり
- 売った日を命日よりもさびしがり
- フジヤマとサクラの国の餓死ニュース
- 屍のゐないニュース映画で勇ましい
- 万歳とあげて行った手を大陸において来た
- 手と足をもいだ丸太にしてかへし
- ロボットを殖やし全部を馘首する