島崎藤村

日本の小説家 (1872-1943)
島崎藤村

島崎藤村(1872年 - 1943年)

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自然主義文学の先陣を切った日本の詩人、小説家。

  • 生命は力なり、力は聲なり、聲は言葉なり、新しき言葉はすなはち新しき生涯なり。
    『藤村詩集』より
  • 木曽路はすべて山の中である。 -- 『夜明け前』
  • まだあげ初めし前髪の
    林檎のもとに見えしとき
    前にさしたる花櫛の
    ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじまりなり

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情けに酌みしかな

林檎畠の樹の下に
おのづからなる細道は
誰がふみそめしかたみぞと
問ひたまふこそひしけれ

  • 『若葉集』
  • 名も知らぬ遠き島より
    流れ寄る椰子の實一つ

故郷の岸を離れて
汝はそも波に幾月

もとの樹は生ひや茂れる
枝はなほ影をやなせる

われもまた渚を枕
孤身の浮寢の旅ぞ

實をとりて胸にあつれば
新なり流離の憂

海の日の沈むを見れば
激り落つ異郷の涙

思ひやる八重の汐々
いづれの日にか國へ歸らむ -- 「椰子の實」

  • 『藤村詩抄』