吉田兼好
鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての歌人、随筆家
日本の歌人
- つれづれなるままに、日ぐらし硯に向ひて、心に移り行くよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、怪しうこそ物狂ほしけれ。(一段)
- 化野の露消ゆる時なく、鳥部山の煙立ちさらでのみ住み果つる習ひならば、いかに物の哀れもなからむ。世は定めなきこそいみじけれ。(七段)
- ひとり燈火のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするこそ、こよなう慰むわざなれ。文は文選のあはれなる卷々、白氏文集、老子のことば、南華の篇。この國の博士どもの書けるものも、いにしへのは、あはれなる事多かり。(十三段)
- 和歌こそなほをかしきものなれ。(十四段)
- 人の亡き跡ばかり悲しきはなし。(三十段)
- 万事は皆非なり。言ふに足らず、願ふに足らず。(三八段)
- 目のさめたらんほど、念佛し給へ。(三九段)
- すこしの事にも先達はあらまほしきことなり。 (五十二段)
- 家のつくりやうは夏をむねとすべし。(五十五段)
- あやまちは、安き所に成りて、必ず仕る事に候ふ (百九段)
- 寺院の号、さらぬ万の物にも、名を付くる事、昔の人は、少しも求めず、たゞ、ありのまゝに、やすく付けけるなり。この比は、深く案じ、才覚をあらはさんとしたるやうに聞ゆる、いとむつかし。人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、益なき事なり。(百十六段)
- 友とするに惡きもの七つあり。一には高くやんごとなき人、二には若き人、三には病なく身つよき人、四には酒をこのむ人、五には武く勇める人、六にはそらごとする人、七には慾ふかき人。善き友三つあり。一にはものくるゝ友、二には醫師、三には智惠ある友。(百十七段)
- 改めて益なきことは、改めぬをよしとするなり。(百二十七段)
- 病を受くることも、多くは心より受く。外から来る病は少なし。(百二九段)
- さしたる事なくて人の許(がり)行くは、よからぬ事なり。用ありて行きたりとも、その事果てなば疾く帰るべし。(百七十段)
- よろづの事は頼むべからず。(二百十一段)
帰せられるもの
編集- みだりに人の師となるべからず、又みだりに人を師とすべからず。真に教える事有りて、人の師となるべし。真に教わる事有りて、人を師とすべし。