王翰(おうかん、生没年不詳)は中国、盛唐期の詩人。字は子羽(しう)。711年(景雲2年)進士に及第し駕部員外郎に任ぜられたが、晩年は不遇であった。酒をこよなく愛し、題材に執った作品が多く見られる。
- 葡萄のよき酒が夜光の杯に注がれる
飲もうとすると馬上で鳴らす琵琶の音が聞こえてくる
酔って砂の上に伏したと君は笑ってくれるなよ
古来戦場より帰ったものは少ないのだから
- 葡萄美酒夜光杯 葡萄の美酒夜光の杯
欲飮琵琶馬上催 飮まんと欲すれば琵琶馬上に催す
醉臥沙場君莫笑 酔うて沙場に臥す君笑うなかれ
古來征戰幾人囘 古来征戰幾人か回る
- 涼州詞第一首
- 夜光杯は玉石から削りだした杯で、中国甘粛省酒泉の特産。
- 故郷の秦中の花鳥はもう盛りだろう
国境の風は砂を含んでまだ寒い
夜に葦笛が旅立ちを寿ぐ折楊柳の曲を吹くのを聴けば
心に長安が思い出される
- 秦中花鳥已應闌 秦中の花鳥已にまさに闌なるべく
塞外風沙猶自寒 塞外の風沙なお自ずから寒し
夜聽胡笳折楊柳 夜に胡茄の折楊柳を聴けば
敎人意氣憶長安 人をして意気長安を覚えしむ