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紀貫之

日本の平安時代の歌人

紀貫之 (きのつらゆき、872年頃-945年頃)は平安時代初期の日本の歌人。『古今和歌集』の撰者の一人で仮名序作者。紀友則は従兄。

目次

和歌編集

『古今和歌集』編集

  • むすぶ手のしづくににごる山の井のあかでも人に別れぬるかな
  • 袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ
  • 春日野の若菜つみにや白妙の袖ふりはへて人のゆくらむ
  • 人はいさ心もしらずふるさとは花ぞむかしの香ににほひける
    • 詞書「初瀬にまうづるごとに、やどりける人の家に、久しく宿らで、程へて後にいたれりければ、かの家のあるじ、かくさだかになんやどりはあると、いひいだして侍りければ、そこに立てりける梅の花を折りてよめる」。
    • 『小倉百人一首』にも収録。。
  • 三輪山をしかもかくすか春霞人にしられぬ花やさくらむ
  • 桜花ちりぬる風のなごりには水なきそらに浪ぞたちける
  • 夏の夜のふすかとすればほととぎすなくひとこゑにあくるしののめ
  • 河風のすずしくもあるかうちよする浪とともにや秋は立つらむ
  • 秋風のふきにし日よりおとは山峰のこずゑも色づきにけり
  • しらつゆも時雨もいたくもる山はしたばのこらず色づきにけり
    • もる山は近江国守山と「漏る」を懸けたもの。
  • 見る人もなくてちりぬるおく山の紅葉は夜のにしきなりけり
  • 年ごとにもみぢばながす龍田河みなとや秋のとまりなるらむ
  • 雪ふれば冬ごもりせる草も木も春にしられぬ花ぞさきける
  • 春くればやどにまづさく梅の花きみがちとせのかざしとぞみる
    • 詞書「もとやすのみこの七十の賀のうしろの屏風によみてかきける」。本康親王は仁明天皇の皇子。
  • しらくものやへにかさなる遠にてもおもはむ人に心へだつな
    • 詞書「みちのくにへまかりける人によみてつかはしける」。
  • わかれてふ事はいろにもあらなくに心にしみてわびしかるらむ
  • むすぶてのしづくににごる山の井のあかでも人にわかれぬるかな
    • 第四句「あか」は「飽か」と「閼伽」(仏への供え物、とくに水)を懸ける。
    • 本歌は藤原俊成『古来風躰抄』。に「歌の本體はたゞ此の歌なるべし」と評される。
  • 吉野河いは浪みたかく行く水のはやくぞ人を思ひそめてし
  • 世の中はかくこそありけれ吹く風のめに見ぬ人もこひしかりけり
  • いにしへに猶立ちかへる心かなこひしきことに物忘れせで
  • あすしらぬわが身とおもへどくれぬまのけふは人こそかなしかりけれ
    • 詞書「紀友則が身まかりにける時よめる」。
  • 君まさで煙たえにししほがまのうらさびしくも見え渡るかな

『後撰和歌集』編集

  • 宮こにて山のはに見し月なれど海よりいでて海にこそいれ
    • 『土佐日記』にも見える。
  • てる月のながるる見ればあまのがはいづるみなとは海にぞありける
    • 『土佐日記』にも見える。

『拾遺和歌集』編集

  • あふさかの関の清水に影見えて今やひくらむ望月のこま
  • 思ひかねいもがりゆけば冬の夜の河風さむみちどりなくなり
  • おほかたのわが身ひとつのうきからになべての世をも恨みつるかな
  • 桜ちる木の下風は寒からでそらにしられぬ雪ぞふりける

その他編集

萩谷朴「紀貫之」『日本文学研究資料叢書 平安朝日記I』有精堂、1971年、p.125

  • 白栲に雪の降れれば草も木も年と共にも新しきかな
  • 朝露のおくての稲は稲妻を恋ふとぬれてやかはかざるらむ
  • 山桜霞のまよりほのかにも見しばかりにや恋ひしかるらむ
  • 真菰刈る淀の沢水雨降れば常よりことにまさるわが恋
  • 大原や小塩の山の小松原はや木高かれ千代の影見む
  • 君まさで煙絶へにし塩釜のうら淋しくも見えわたるかな
  • 桜散る木の下風は寒からで空に知られぬ雪ぞ降りける
  • かき曇りあやめも知らぬ大空に蟻通しをば思ふべしやは
  • ひぐらしの声もいとなく聞ゆるは秋夕暮になればなりけり
  • あるものと忘れつつなほ亡き人をいづらと問ふぞ悲しかりける
  • 影見れば波の底なる久方の空漕ぎわたるわれぞさびしき
  • ちはやぶる神の心を荒るる海に鏡を入れてかつ見つるかな
  • 千代経たる松にはあれどいにしへの声の寒さは変らざりけり
  • ぐら山ねたちならしく鹿のにけむ秋をる人ぞなき
    • 小倉山を各句の頭においた折句
  • 桜花咲きにけらしも足曳きの山の峡より見ゆる白雲
  • うば玉のわがくろかみやかはるらむ鏡の影にふれる白雪
    • 紙屋川を詠み込んだ物名もののな歌。鏡は川のほとりにある鏡石[1]

散文編集

『古今和歌集』 仮名序編集

  • やまとうたは ひとのこころをたねとして よろづのことのはとぞ なれりける
  • 世の中にある 人ことわざ しげきものなれば 心におもふことを 見るものきくものに つけていひいだせるなり
  • になくうぐひす にすむかはづのこゑをきけば いきとしいけるものいづれかうたをよまざりける
  • ちからをもいれずしてあめつちをうごかし めに見えぬ おに神をもあはれとおもはせ をとこをむなのなかをもやはらげ たけきものゝふの心をもなぐさむるはうたなり
  • このうた あめつちのひらけけはじまりけるときより いできにけり しかあれども 世につたはることは ひさかたのあめにしては したてるひめにはじまり あらかねのつちにては すさのをのみことよりぞおこりける ちはやぶる神世には うたのもじもさだまらず すなほにして 事の心わきがたかりけらし ひとの世となりて すさのをのみことよりぞおこりける
  • ちはやぶる神世には、うたのもじもさだまらず、すなほにして、事の心わきがたかりけらし
  • ひとの世となりて、すさのをのみことよりぞ、みそもじあまりひともじはよみける
  • かくてぞ 花をめで とりをうらやみ かすみをあはれび つゆをかなしぶ心 ことばおほく さまざまになりにける。とほき所も いでたつあしもとよりはじまりて 年月をわたり たかきも ふもとのちりひぢよりなりて あまぐもたなびくまでおひのぼれるごとくに このうたも かくのごとくなるべし
  • なにはづのうたは みかどのおほむはじめなり
    「なにはづのうた」は「なにはづにさくやこの花ふゆごもりいまははるべとさくやこのはな」。仁徳天皇に帰せられる。
  • あさか山のことばは うぬめのたはぶれよりよみて このふたうたはうたのちははのやうにてぞ 手ならふ人の はじめにもしける
  • いにしへより かくつたはるうちにも ならの御時よりぞ ひろまりにける
    「ならの御時」は平城天皇。
  • かのおほむ世や うたの心をしろしめしたりけむ
  • 人まろはあかひとがかみにたたむことかたく あか人は人まろがしもにたたむことかたくなむありける
  • たとひ時うつり ことさり たのしび かなしびゆきかふとも このうたのもじあるをや
  • うたのさまをもしり ことの心をえたらむ人は おほぞらを見るがごとくに、いにしへをあふぎて、いまをこひざらめかも

『土佐日記』編集

  • をとこもすといふ日記といふ物をゝむなもしてみむとてするなり
    • 表記は定家本「土左日記」による。
  • おもひ出でぬことなく、おもひ恋しきがうちに、この家にて生まれしをんな子の、もろともにかへらねば、いかがは悲しき。舟人も、みな子たかりてののしる。かかるうちに、なほ悲しきにたへずして、ひそかに心知れる人といへりける歌
むまれしもかへらぬものをわが宿に小松のあるをみるがかなしさ
とぞいへる。なほ飽かずやあらむ、またかくなむ
みし人の松のちとせにみましかばとほくかなしき別れせましや
  • 帰京して、任地でなくなった女子を悼む歌。
    • 表記は定家本「土左日記」による。

外部リンク編集