秋
地球の四季のひとつで夏と冬の間
秋に関する引用句と諺。
引用
編集- ものさびしくあはれなる体、秋の本意なり。--『至宝抄』
- やうやう夜寒になるほど、雁鳴きてくる比、萩の下葉色づくほど、早稲田刈り干すなど、とり集めたる事は、秋のみぞ多かる。 -吉田兼好『徒然草』第十九段
- 秋風秋雨、人を愁殺す。 -秋瑾
- 秋風秋雨愁煞人。
春秋の争い
編集- 秋山の 木の葉を見ては
黄葉 をば 取りてぞ偲ふ 青きをば 置きてぞ嘆く そこし恨めし 秋山吾れは --額田王「春秋競憐」『万葉集』- 秋山乃 木葉乎見而者 黄葉乎婆 取而曽思努布 青乎者 置而曽歎久 曽許之恨之 秋山吾者
- 心から 春待つ園は わが宿の 紅葉を風の つてにだに見よ --秋好中宮(『源氏物語』胡蝶)
- 秋になりて、月いみじう明かきに、空は霧りわたりたれど、手にとるばかりさやかに澄みわたりたるに、風の音、取りあつめたるここちするに、筝の琴かき鳴らされたる、横笛の吹き澄まされたるは、なぞの春とおぼゆかし --源資通(『更級日記』)
- 春はただ花の一重に咲くばかり物のあはれは秋ぞまされる --よみ人知らず『拾遺集』
秋の夕暮
編集- 秋は、夕暮。夕日のさして、山の
端 いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの列ねたるがいと小さく見ゆるは、いとをかし。-- 清少納言三巻本系『枕草子』 - さびしさは その色としも なかりけり 槙立つ山の 秋の夕暮 -寂蓮『新古今和歌集』秋上・361
- こころなき 身にもあはれは しられけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮 -西行『新古今和歌集』秋上・362
- 見渡せば 花ももみぢも なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮 -藤原定家 『新古今和歌集』秋上・363
- 菜もなき 膳にあはれは しられけり 鴫焼茄子の 秋の夕暮 -唐衣橘州
初秋
編集- 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる -藤原敏行 秋上・169
- 昨日こそ早苗とりしかいつのまに稲葉そよぎて秋風のふく -よみ人しらず 秋上・172
- 秋のけはひ入り立つままに、土御門殿の有様、いはんかたなくをかし。池のわたりの梢ども、遣水のほとりの草むら、おのがじし色づきわたりつつ、おほかたの空もえんなるにもてはやされて、不断の御読経の声々あはれまさりけり。やうやう涼しき風のけはひに、例の絶えせぬ水のおとなひ、夜もすがら聞きまがはさる。 -紫式部『紫式部日記』
秋草
編集- 長崎の原子爆弾を詠んだ短歌。
七夕
編集- 秋風の吹きにし日より久方のあまのかはらにたゝぬ日はなし -よみ人しらず 秋上・173
- 天の河あさせしら浪たどりつゝ渡りはてねばあけぞしにける -紀友則 秋上・177
- なぬかの夜の暁によめる
今はとてわかるゝ時は天の川わたらぬさきに袖ぞひちぬる -源宗于 秋上・182 - やうかの日よめる
けふよりは今こむ年の昨日をぞいつしかとのみまちわたるべき -壬生忠岑 秋上・183
秋の夜
編集- このまよりもりくる月のかげ見れば心づくしの秋はきにけり -よみ人しらず 秋上・184
- わがためにくる秋にしもあらなくに虫の音きけばまづぞ悲しき -よみ人しらず 秋上・186
- かくばかり惜しと思ふ夜をいたづらに寝であかすらん人さへぞうき -凡河内躬恒 秋上・190
- 白雲にはねうちかはし飛ぶかりのかずさへ見ゆる秋の夜の月 -よみ人しらず 秋上・191
- 月見ればちゞにものこそかなしけれわが身ひとつの秋にはあらねど -大江千里 秋上・193
- 秋の夜のあくるも知らずなく虫はわがごと物やかなしかるらん -藤原敏行 秋上・197
- ちはやぶる神代もきかず龍田川 からくれなゐに水くくるとは --在原業平朝臣
- 月みれば千々に物こそ悲しけれ 我が身ひとつの秋にはあらねど --大江千里
- 小倉山峰のもみぢ葉心あらば いまひとたびのみゆきまたなむ --貞信公
- 山川に風のかけたるしがらみは 流れもあへぬ紅葉なりけり --春道列樹
- 白露に風の吹きしく秋の野は つらぬきとめぬ玉ぞ散りける --文屋朝康
- さびしさに宿を立ちいでてながむれば いづくもおなじ秋の夕暮--良暹法師
- 夕されば門田の稲葉おとづれて 蘆のまろやに秋風ぞ吹く --大納言経信
- 秋風にたなびく雲の絶えまより もれ出づる月の影のさやけさ --左京大夫顕輔
- きりぎりすなくやしも夜のさむしろに 衣かたしきひとりかもねむ --後京極摂政前太政大臣