春
四季の1つで冬の次、夏の前
春に関する引用と諺。
引用
編集古代
編集- というのも一羽の燕や一日が春をもたらすのではなく、それと同じく、浄福なひと、幸いなひとを作るものは一日や短時間ではないのである。--アリストテレス『ニコマコス倫理学』第1巻第6章、1098a、19f。
万葉集
編集- ひさかたの天の香具山この夕(ゆふべ)霞たなびく春立つらしも --柿本人麻呂
- 久方之 天芳山 此夕 霞霏 春立下 -- 『万葉集』巻十・1812。巻頭歌。
- 春さればしだり柳のとををにも妹は心に乗りにけるかも --柿本人麻呂
- 春去 為垂柳 十緒 妹心 乗在鴨 -- 『万葉集』巻十・1896。「とをを」は「たわわ」と同意。
- いはばしる垂水の上の早蕨の萌え出づる春になりにけるかも --志貴皇子
- 石激 垂見之上乃 左和良妣乃 毛要出春尓 成来鴨 -- 『万葉集』巻八・1418。
- 春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ娘子(をとめ) -大伴家持
- 春苑 紅尓保布 桃花 下照道尓 出立嬬 -- 『万葉集』巻十九・4139。
- 春の野に霞みたなびきうら悲しこの夕影に鶯鳴くも
我が屋戸のいささ群竹吹く風の音のかそけきこの夕かも
うらうらに照れる春日に雲雀上がり情(こころ)悲しも独りし思へば -大伴家持「春愁三首」- 春野尓 霞多奈伎 宇良悲 許能暮影尓 鴬奈久母
和我屋度能 伊佐左村竹 布久風能 於等能可蘇氣伎 許能由布敝可母
宇良々々尓 照流春日尓 比婆理安我里 情悲毛 比登里志於母倍婆 -- 『万葉集』巻十九・4290〜4292。
- 春野尓 霞多奈伎 宇良悲 許能暮影尓 鴬奈久母
古今和歌集
編集- 年の内に 春はきにけり 一年を 去年とやいはむ 今年とやいはむ -- 在原元方
- 『古今和歌集』春上・1。巻頭歌。
- 雪のうちに 春は來にけり 鶯の 冰れる涙 今やとくらむ -- 二条の后(藤原高子)
- 『古今和歌集』春上・4。
- 世の中に たえて櫻の なかりせば 春の心は のどけからまし -- 在原業平
- 『古今和歌集』春上・53
その他
編集- 春宵一刻値千金
花に清香有り月に陰有り -蘇軾「春夜」- 春宵一刻値千金
花有淸香月有陰
- 春宵一刻値千金
- 春寒くして浴を賜ふ華清の池
温泉水滑らかにして凝脂を洗ふ- 春寒賜浴華淸池
溫泉水滑洗凝脂 -- 白居易「長恨歌」
- 春寒賜浴華淸池
- けふのみと春をおもはぬ時だにも立つことやすき花のかげかは -- 凡河内躬恒
- いくとせの春に心をつくしきぬあはれと思へみよしのゝ花 -- 藤原俊成
- 見渡せば山もと霞む水無瀬川ゆふべは秋となに思ひけん --後鳥羽院
- 『新古今和歌集』巻頭歌。
- ほのぼのと春こそ空にきにけらし天のかぐ山霞たなびく --後鳥羽院
- 『新古今和歌集』。
- 春は吉野初瀬の花、いろいろをつくし織りたる、紅梅、梅、桜、柳の糸の、春風に乱れて、ものぞ思ひける、契の程は知らねども、音にのみきくの水、心づくしぶね、こがれて出でにし山吹の、色をしるべにあこがれて、あふに命もながらへて、結びかけたる契をも、召したくや候 --『文正さうし』
- 願はくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月の頃 -- 西行
- 春風の花を散らすと見る夢はさめても胸のさわぐなりけり -- 西行
- 春の夜のゆめのうき橋とだえして峰にわかるる横雲のそら -- 藤原定家
- いでていなば主なき宿と成ぬとも 軒端の梅よ春をわするな -- 源実朝
- シテ〽これかや春の物狂、
地謡〽乱れ心か恋草の、
シテ〽力車に、七車、
地謡〽積むとも尽きじ、 -世阿弥『百万』(観世流)
- 行く春を近江の人と惜しみける --松尾芭蕉
- 春の海終日(ひねもす)のたりのたりかな -- 与謝蕪村
- めでたさも中くらいなりおらが春 -- 小林一茶
- ほのぼのと明けゆく空も紫ににほふや春のむさし野の原 -加藤千蔭『うけらが花』一・春
- ほのぼのと色みえそむる花の枝にあけもおくれぬもも鳥のこゑ -本居春庭『後鈴屋集』後編・上
- 一刻を千金づゝにつもりなば六万両の春のあけぼの -四方赤良
- 『万代狂歌集』所収。
- The year's at the spring,
And day's at the morn;
Morning's at seven;
The hill-side's dew-pearl'd;
The lark's on the wing;
The snail's on the thorn;
God's in His heaven--
All's right with the world ! -- Pippa's Song in: Robert Browning, Pippa Passes, 1841(「ピパの歌」、劇詩『ピパ、過ぎゆく』)
- くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる --正岡子規
- いちはつの花咲きいでて我目には今年ばかりの春行かんとす --正岡子規
- にしき織りなす長堤に
暮るればのぼるおぼろ月
げに一刻も 千金の
ながめを何にたとふべき -武島羽衣「花」
- 春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外の面の草に日の入る夕 --北原白秋
- 四月の気層のひかりの底を
唾し はぎしりゆききする
おれはひとりの修羅なのだ -宮沢賢治「春と修羅(mental sketch modified)」
- 窓あけて窓いつぱいの春 -種田山頭火『草木塔』
- 春は來ぬ
春は來ぬ
初音やさしきうぐひすよ
こぞに別離(わかれ)を吿げよかし -島崎藤村「春の歌」
比喩としての春
編集- その子二十櫛に流るる黒髪のおごりの春の美しきかな -- 与謝野晶子
小倉百人一首
編集諺
編集- 男心と春の空 -- 日本の諺